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Xemem:昆虫食


許に『「ゲテ食」大全』という書籍がある。著作者は北寺尾ゲンコツ堂、データハウスから出版されている。内容は一般的には食材とされない昆虫及び動植物の調理の仕方が写真入りで(カラー写真もあり)載っている。年齢とともに昆虫が苦手になった私にとっては悪夢のような書籍である。

基本的に昆虫は油であげることで臭みを無くし香ばしい香りと心地よい歯ごたえのある食材となるようだ。また、昆虫に与える餌によってその味覚が変わるということで、味を想像しながら育てる楽しみも味わうことができるとも記載されている。帯には

あらゆる生物は、
人間の食材として平等である。

として、動物の名前が列挙されている。この書籍を読んで実際に調理する人がどれだけいるのかは想像できないが少なくとも私と私の家族とこの本を私に渡した知人は行動に移していない。ただし将来に渡って絶対にこの書籍の内容を参考にして実行しないとは言い切れない。

ちなみにころもをつける調理法はミミズとランチュウだけしか記載されていなかった。内容を読む限りでは昆虫は甲殻類のためころもをつけることで味わえる触感が必要無いということが、主な原因と思われる。また、昆虫の中でいもむしのような食材は一般でも広く普及していることから、この書籍の趣旨である「ゲテ食」に反するためだと思われるが、ほとんど言及されていない。

の先進国「中国」では「空を飛ぶのは飛行機以外、四つ足なら椅子以外、ニ本足なら親以外は何でも食べる」ということわざ(?)があるそうだ。実際に一昔前にはテレビでゲテモノ系の食の番組が多数放映されていたのを記憶している。有名なのは「蚊の目玉のスープ」だろうか。「岩つばめの巣」を使った料理も萬漢全席にあると聞く。ゴキブリは漢方薬として現在でも販売されているところがあるようだ。

ギリシャでは、たくさんの料理を楽しむため、宴席には孔雀のはねと大きな壷が用意されたという話を何処かで聞いたことがある。満腹になると孔雀の羽を咽に入れて胃の中味を壷の中にもどし、再び食べはじめるのだそうだ。痰壷ぐらいの感覚で利用していたのだろうか。ところが、その話を栄養に詳しい人が全く悪い風習というわけではない、という趣旨の評価をしていた記憶がある。胃の中で消化された重要な栄養分は早い段階で腸の方へ移動してしまうので良いらしいのだ。もったいないことこの上ないと私などは思ってしまうが、人間の未来はわからないので怖い。

本当か嘘か知らないが焼き餃子のルーツは、大富豪などが食べ残して捨てた水餃子を貧乏人が拾って消毒を兼ねて再調理したのがはじまりだったという話である。

デオレンタルショップに行くと様々な文化が列挙されているなぁと感心するのだが、その中で「八仙飯店之人肉饅頭」という実際におきた事件をもとにしたものが置いてあった。マカオの中国料理店で一家惨殺し、肉マンにしたという話らしい。スプラッターが苦手なのでまだ見るに至ってないが、タイトルを見ただけで内容が容易に想像できるところがすばらしい。文学的な臭いすらしてくる。

昔、坪内逍遥が翻訳したものの中に「人肉質入騒動」というタイトルのものがあるそうだ。誰もが知っているタイトルになおすと「ヴェニスの商人」である。タイトルだけ見るとスプラッターとも受け取れるような、それでいて内容を的確に表していると私は学生時代に感心したものである。

ホラー漫画の中で深く心に残っている(トラウマになっている)漫画がある。タイトルを失念したが「お茶漬け海苔」という人が書いた作品だ。賭け事に熱を入れた少年がお金がなくなり様々なものを賭ける話である。話の流れから想像できると思うが、人肉を質に入れるのである。それ以上は話が面白くなくなるのでここには書かないが、とにかく古本屋で立ち読みして気分が悪くなった(それなのに読んでしまった)漫画である。

分が悪くなった書籍として「ギーガ」の画集があげられる。映画「エイリアン」のデザインを担当した有名な画家(?)である。映画は彼の絵を相当忠実に実体化しているが、やはり絵にはかなわない。古本屋でページをめくるたびに冷や汗が出て立ちくらみをおこしそうになった。読んでいたのは「ネクロノミコン」という画集で、これは「H.P.ラグクラフト」というホラー作家が中心となって作り上げた「クトゥルフ神話」の中に出てくる架空の書籍のタイトルである。「クトゥルフ神話」体系は多くのホラー作家に支持されて「H.P.ラグクラフト」がなくなって久しい現在も少しづつ関連小説が出版されている。

クトゥルフ神話体系の中で日本人が書いたものもある。「妖神グルメ」菊地秀行著、朝日ソノラマ文庫から出版されている。これは、ゲテ食屋がゲテ食でクトゥルフの神々と渡り合うという壮大な話である。料理や調理は作者の想像力のせいか上記の『「ゲテ食」大全』にかなわないところがあるが、神話体系の中の神々が次々と出てくる爽快さは見逃せない。ホラーというよりは冒険ものといった感があるので、刺激を求めてこの本を手にとった場合、『「ゲテ食」大全』との併用をお勧めいたします。


2001.4.26
T/Maruyama/Alice
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