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催眠の科学〜誤解と偏見を解く〜

成瀬 悟策著

2001/9/03

催眠術と言うのは20世紀の後半、UFOや超能力とからめて、アンダーグラウンドの世界の一部としてテレビに登場してきたと思う。私が催眠術を目にしたのも確か、そのたぐいのテレビ番組だったと思う。テレビと言うメディアは物事を歪曲して伝える性質があるので仕方がないことだが、そう言ったアンダーグラウンドのイメージを払拭することを目的にした本であることは、サブタイトルからも読み取ることができる。

なぜ、アンダーグラウンドのイメージを払拭しなければならないのか、と言うと、この「催眠」術を積極的に治療にもちいようとしているからである。実際にインターネットを検索すると、多数の催眠治療を行っている診療所等を見つけることができる。医者が催眠治療を行おうとしている時に、「催眠」術に対するアンダーグラウンドのイメージをもとにして患者が拒否したり、治療のさまたげになるような医者に対した疑惑を持つことは、催眠治療を研究している人たちにとっては本当に残念なことだからだと思われる。

この本は、催眠の歴史から入って、暗示などの方法や、催眠中の被催眠者の生理現象、催眠の利用・活用に関することが書かれている。教育に関する活用事例なども書かれていてとても興味深かったが、少ないページの中で沢山のことを詰め込み過ぎたせいで、内容は全体的にあっさりしている。催眠に関する入門書とするのにちょうど良いかもしれない。

アンダーグラウンドのイメージを持ってしまったもう一つの原因は、やはり歴史の薄さ、人間の精神に関する故の実験例の少なさにあるように思われる。医療に関する研究、特に精神に関する抽象的な研究は、医療現場において実験的に実施されるものも多い。心の病気をなおす技術を正常な人に施しても効果のほどはわからない。だから、こういった医療がもっと進むためには多く医療現場に浸透していかなければならないだろう。

特に現代は多くの人が心を病んでいると言われる。ストレスを抱えていることが普通の人となっているように私は思う。こういう世の中だからこそ、心をリラックスできる催眠をより一般化していくことが重要なのかもしれない。