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CIA洗脳実験室〜父は人体実験の犠牲になった〜

ハービー・ワインスタイン著
苫米地 英人訳

2001/8/27

ユーイン・キャメロンという精神科の医師がカナダでCIAとカナダ政府の援助のもとで十分な同意のない患者を使って洗脳に関する人体実験を行ったことに関する書籍である。著者はキャメロン医師によって様々な治療を受けた患者の息子である。そして、著者もキャメロン医師と同様に精神医でもある。

この本の前半は著者の父親がいかなる医療行為を受けてどのような状態になったのかということ、また、本人だけでなく周囲の家族にどのような苦痛をあたえたかと言うことが書かれている。特にキャメロン医師が行った治療行為に関してカルテとキャメロン医師のメモと著者の記憶をもとに具体的に書かれていると言うことは注目に値する。この本を使って洗脳実験をすることも不可能ではないと言うことである。

後半は、CIAやカナダ政府に対して訴訟を行っていく過程が書かれている。人体実験に関する医療の立場と言うものがくり返し述べられ、キャメロン医師の行為が、現在はもちろん当時においても正当性を持たないということが様々な形で述べられている。訴訟が最終的にどのような形となったのかは、読んで知っていただきたいと思う。

最後に、翻訳者で脳機能学者である苫米地英人氏と評論家の宮崎哲弥氏の対談が載っている。内容は主にオーム(現在アレフ)というカルト集団の洗脳行為に関することに言及したり、日本の医学の倫理観に関することが話題としてのぼっている。

この本を手に取ったきっかけはもちろん「洗脳」というキーワードである。私は常に教育現場はごく初歩的な洗脳行為を使っているのではないかと、常々疑問に思っている。洗脳と洗脳に類似した行為ははっきりとした境目を持たず、教育は常に洗脳的な側面を持つものなのかどうか、はっきりとした答が知りたかった。具体的な事例が多いこの本も、極端な例ばかりで私の疑問に答えるものではなかった。

この本の主題とも言える「医療現場のモラル」に関しては「インフォームドコンセント」が叫ばれている日本で重要で意味があり興味の湧く話だと思われる。法律的な側面は日本とはやや違っているだろうと思われるので、読んでいて面白いがためになると言う感じではなかった。

著者の半生を記録した伝記とも読むことができるが、そういった意味では少々読みにくいかもしれない。必要な時に突然と過去の記憶、思い出が語られるからだ。流れの中心にあるのは著者の父であり、キャメロン医師である。